[質問者]

がん治療用の体内埋め込み型発光デバイスの研究ということですが、従来のものとどのように異なるんでしょうか？

[山岸さん]

私が研究した発光デバイスは体内に「埋め込む」ことで、体の中から直接光を患部にあてることができるというものです。

そもそも従来の治療法ですと、体外からレーザー光などの強い光を短時間当てることでがん治療を行なっていました。最近では内視鏡の先端に光ファイバーが備え付けられた装置を体内に入れる手法が、食道がんの治療などに用いられています。

しかしそれでも治療できるがんは「内視鏡が届く範囲」に限られてしまい、体の深部にある肝臓や膵臓などにはPDTはまだ適用できません。

また、当てる光が強すぎたり、装置を組織に近づけすぎたりすると、健康な組織までが火傷してしまうので、お医者さんの絶妙なさじ加減が必要となります。

それに対して、私たちの研究チームが考えたのは、LEDのような弱い光でも長時間、それも体内から直接当てることでがん細胞を死滅させるという手法です。この手法は、「メトロノミックPDT」と呼ばれ、身体への負担が少なくより安全です。

そこで、体内に埋め込める小さな無線式の発光デバイスを体の中で安定に長期間固定する目的で、ナノシート(高分子超薄膜)という薄い材料に着目しました。

ナノシートの厚さは10~100 nm (ナノメートル)くらいです。サランラップが10 μm (マイクロメートル)ですので、それの100分の1以上も薄いということになります。

＊ナノは「10億分の1」という意味

＊マイクロは「100万分の1」という意味

生体医工学